キムタクが一番輝いてたときっていつだろう?
『今でしょ!』というファンの方々には失礼な質問かしら。
わたしが選ぶとすれば、木村拓哉が「抱かれたい男NO1」を突っ走っていたころ、楽しみに見ていたドラマ「ロングバケーション」のキムタクかな(古っ)。この月9ドラマは「ロンバケ現象」なるものを引き起こし、当時の女性たちを熱狂させたものだ。ちなみにわたしは「愛していると言ってくれ」のトヨエツ派だった。
それ以降も、キムタクは数々のTVドラマや映画の主役を張って、最近では「グランメゾン東京」が記憶に新しい。でも、一皮むけたな・・・と思わせるような新たな魅力を感じることが少なくなった。コメディや汚れ役はどうなんだろう?と思っていたところ、フジテレビ開局60周年記念、二夜連続の新春SPドラマで「教場」の風見教官役を演じるという。
長岡弘樹の「教場」シリーズ、面白いよね!
でも、50代、白髪、隻眼、イメージは全然キムタクじゃないんだけどな。
どんな風見公親(かざみ きみちか)を演じるのか、期待しながらTVの前に。ドラマを見逃した方は「FODプレミアム」で。
原作「教場」とは
この「教場」シリーズをご存じない方々のために、簡単に原作について紹介しておこう。
必要な人材を育てる前に、不要な人材をはじきだすための篩。それが、警察学校だ。
白髪隻眼の鬼教官・風間公親のもとに、初任科第百期短期課程の生徒達が入校してきた。半年間、地獄の試練を次々と乗り越えていかなければ、卒業は覚束ない。
ミスを犯せば、タイムリミット一週間の“退校宣告”が下される。(Amazon co.jpより)
不勉強ゆえ、「教場」という言葉をこの小説で初めて知った。「教室」「教える場所」という意味だ。警察組織を舞台にした小説は、けっこう読んできたと思うが、警察学校について詳しく書いた小説は初めて。
「教場」で描かれるようなことが警察学校で本当に起こっているのかどうかは分からない。ただ、取材もかなり行ってきたのだろう、リアルな描写は、まるで自分がその場にいるように生々しい。読んでいくうちにゾクゾクしてくる。
推理小説らしい謎解きとともに、生徒間、教官と生徒間の人間ドラマも描かれており、ミステリとも、学園小説とも分類しがたい。生徒たちが、心身共に追い込まれていく苦しい訓練の中から成長を遂げていくことに心打たれる。しかしながら、単なる感動ドラマに終わらず、毒を含んだ「陰」の描写がまた魅力的だ。
シリーズは以下の3作とスピンオフ1作の合わせて4編。シリーズ全体ではなんと50万部を突破。週刊文春「2013年ミステリーベスト10」国内部門第1位に選ばれている。
<スピンオフ>
わたしは読んでから見る派だから、原作ものは先に読みたくなるのだ。
自分のイメージと俳優が合うかとか、脚本のアレンジとか考えながら見るのが好き。
ネタばれ必至なのがつらいとこ(笑)。
「教場」ドラマ版
キムタクの新境地
結論から言うと、
キムタク版、風間公親、すごく良かった!
原作の風間教官は、私の個人的なイメージでは、キムタクのようなクールなイケメンでは決してないのだけど、二人はどことなくリンクしている。
白髪、濃いサングラス、こけた頬で、若々しさを極力そぎ落とし、「ちょ、待てよ」のようないつものキムタク節はかけらも出てこない。「何を考えているのか全く読めない不気味さ」という風間公親の最大の特徴を演じきったキムタク。ものすごく集中している緊張感がこちらまで伝わってくるようだ。
人生最後まで二枚目一筋、というのも悪くないとは思うけれど、中年以降の男の人の魅力って、時折見え隠れする、だらしなさだったり、弛みやシワのような劣化だったり、ある意味そんなマイナスなところに現れてくる気がする。人としての深みや器の広さ、人間的な可愛らしさが見える気がして。
水谷豊の「相棒」や、内野聖陽の「臨場」のように、キムタクで「教場」をシリーズ化したらどうかな。
「臨場」も横山秀夫の原作が秀逸!
ちなみに、わき役の大島優子もとっても良かった。AKBを卒業してから、だんだんいい女優さんに成長しているな。
典型的なキムタクを好きなファンもきっと楽しめるドラマだ。
小説も負けず劣らず面白いので読んでみて!