スポーツ選手の引退後は?
プロ野球選手の第2の人生を扱ったドキュメンタリーは、本当に昔から不定期に何度も放映される。視聴率も高いようだから、その人物のファンではなく、野球にそもそも興味がない人でも、つい引き込まれてしまう話題なのであろう。自らの境遇と照らし合わせる人もいるだろうし、「栄光」、「転落」、「再起」、「再生」という、人々が欲するドラマがすべて含まれているのだから、見たくなるのも当然。
かくいう私も、この手の番組が好きである。スポーツはサッカーも野球もおしなべてすべて好きで、刺激や感動を与えてくれた選手がその後どうなったか関心がある。そして、彼らの生き方を通じて、人はどのように自分のマインドを大きくチェンジできるのか、家族や夫婦とは何なのか、と深く考えさせられる。
大抵の場合、番組に出てくるような人は、文字通りの転落人生を歩んでいるわけではなく、成功者や、明るい希望を感じさせる人が多い。実際には、その後ろに隠れた大多数の元プロスポーツ選手たちは、出口の見えない生活にあえいでいたり、あるいは平々凡々と市井に埋もれてしまっていたりで、ドラマにはならないのだろう。
元アスリートの転職市場は、一番に希望するだろう監督やコーチなどにつける人はごくわずか。彼らは、何万人、何十万人に一人のスポーツエリートで、選ばれし人間なのに、華やかな表とは裏腹に、セカンドキャリアが非常に難しい。契約金を元手にした飲食店や、不動産業に進出する人がやっぱり多いようだが、いずれも難しい商売だ。
主な転職先
1.飲食業
2.不動産業
3.建設業
4.一般営業職
転職が難しい理由
● 高卒が多い
サッカー選手や野球選手は大学に進学せず、クラブチームなどに参加することが多い。プロになるくらいなので、幼い頃からスポーツ一筋で、現役時代も競技のことしか考えていない人も多いかもしれない。スポーツも勉学もという二刀流はやっぱり少数派だろう。
● 急な戦力外通告
戦力外通告によって、自由契約か任意引退扱いになる。だが、現役続行を希望する選手に平等に再契約の機会が与えられるように戦力外通告可能な期間は以下の2期間である。
第1次は10月1日から全球団のレギュラーシーズン終了翌日翌日まで。
第2次はクライマックスシリーズ全日程終了翌日から日本シリーズ終了翌日まで。
この中途半端な時期は就活には向いていない。
● プライドの高さ
今までトップ選手として、企業や監督、コーチなどから頭を下げてスカウトされた経験から、自分で頭を下げてお願いすることに慣れていないとも言える。スター選手ほど、現役時代の華やかさとの落差があって、売り込みに飛び込みにくいだろう。スポーツ選手に限らず、たとえば大企業を辞めた後のセカンドキャリアがなかなか上手くいかないのもこれが原因であることが多いように思う。これは翻訳の世界も同じかと。
スポーツ選手の妻たち
アスリートの妻たちの1番の仕事と言えば、選手の体調管理のための食事作りが最初に頭に浮かぶ。食事だけではなく、生活全般も入念な気遣いが必要だ。
でも、セカンドキャリアの構築の難しさを考えれば、裏方としてフォローに徹することも大事だけど、自分が自立して、場合によっては引退後にだんなさんも一緒にやっていけるような仕事を持っておくことも選択肢の一つではなかろうか。
そんなことを思ったのも、最近ちょくちょく、サッカーの加地 亮選手が経営している地元のカフェ、CAZI CAFEに友達と訪れるからだ。関西は、野球ならば阪神タイガース、サッカーならばガンバ大阪、セレッソ大阪、とプロ選手が多く住むところ。こちらのカフェは奥様が切り盛りしていて、他にはヘアエステサロンも夫婦で経営している。
この界隈では噂の名店で、おかずイロイロランチが私のお気に入り。古民家を改装していて、ゴージャスな雰囲気はなく、お隣の家にお邪魔したという雰囲気のお店だけれど、それがかえってオーナーやスタッフの若々しさとフィットしていていい。ランチは若ママやマダムたちでいつもいっぱい。
「トゥナイト」(懐かしい!)で一躍有名になった元アイドルの岡元あつこさんは、元日本代表の柳本啓成選手と結婚して、奈良でYANAGI FIELDというプロサッカー選手を目指すジュニアの育成の学校のスタッフとして活躍している。スクール会員は関西でも有数の規模の数百人で、奈良だけでなく大阪や京都から通ってくる子供たちも多い。Jリーガーとなる選手も出てきそうだ。これはセカンドキャリアとしては理想的な姿だ。
スポーツ選手の第2の人生について書いてみたけれど、セカンドキャリアは誰にでも降りかかる大きな課題の1つ。他人事ではないね。