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ビジネス書としてもエンタメ小説としても成り立つ魅力
今、一番ノッテいる作家は誰?
こう聞かれて最初に出てくるのは池井戸潤かも。
「半沢直樹」の大ヒット以来、次々作品がドラマや映画化されてるね。
池井戸潤氏は、子供のころからミステリ好きで、国内外のミステリを読みあさっていたという。
元銀行員という経歴を生かして、銀行や中小企業を描くことが多く、江戸川乱歩賞の選評で「銀行ミステリの誕生」と言われたように、企業小説と「どんでん返し」を含むエンタメミステリの両方の特徴がうまく溶けあっている。
江戸川乱歩賞を受賞したデビュー作「果つる底なき」。こちらはまさに本格的なサスペンスで、初めて読んだとき「売れそうな作家が現れたな」と思ったものだ。未読の方はぜひ。
今回は数ある映画化/ドラマ化された中で、勝手にわたしのBEST5を選んでみた。「半沢直樹」シリーズ(オレバブシリーズ)は別格として除く。
<半沢直樹シリーズ>
- 「オレたちバブル入行組」
- 「オレたち花のバブル組」
- 「ロスジェネの逆襲」
- 「銀翼のイカロス」
ちなみに今回のランキングは、純粋な「原作面白さランキング」ではなく、映画/ドラマのデキを含めた「総合ランキング」としての感想だ。
ただし、この順位、今後もどんどん書き換えられていく予感。次はスケールが大きい、仮想通貨をテーマにした『架空通貨(原題「M1」)』が映画化されてほしいな。
1.「空飛ぶタイヤ」-涙腺崩壊!
さて、早速の第1位は「空飛ぶタイヤ」。「空飛ぶタイヤ」は、2009年にWOWOWの「ドラマW」でドラマ化され、2018年には映画化されている。
走行中の大型トレーラーが脱輪し、はずれたタイヤが歩道を歩く若い母親と子を直撃した。
トレーラーの製造元ホープ自動車は、トレーラーを所有する赤松運送の整備不良が原因と主張するが、社長の赤松は到底納得できない。
独自に真相に迫ろうとする赤松を阻む、大企業の論理に。会社の経営は混迷を極め、家族からも孤立し、絶望のどん底に堕ちた赤松に、週刊誌記者・榎本が驚愕の事実をもたらす。(講談社文庫)
わたしがおススメするのは、平成21年日本民間放送連盟賞 テレビドラマ番組部門 最優秀賞などの様々な賞に輝いたWOWOWのドラマ版。このようにものすごく重いテーマを扱っていながら、家族愛や人間愛を、丁寧にえがいている。
仲村トオルは不思議な俳優で、とりたてて演技がうまいとは思えないのに(わたしはビーバップハイスクール時代からのファン笑)、実にリアリティのある、心にグッとくる演技を見せてくれるのだ。男気と繊細さを見事に表現していた。
5話で終わるにはもったいないけれど、原作に忠実によくまとまっている。涙腺崩壊間違いなし!
映画の長瀬智也版の「空飛ぶタイヤ」も決して悪くない。ディーン・フジオカ、高橋一生という目の保養の役者陣を集めており、そこそこの秀作にしあがっている。
2.「七つの会議」-会社の闇がヤバい
「七つの会議」は、現在プライム会員特典ではなくレンタルにて有料。
中堅電機メーカーの東京建電で起こるさまざまな不祥事と、それに巻き込まれていく社員たちの姿を描き、「日本経済新聞電子版」に連載されていた作品だ。
都内にある中堅メーカー、東京建電。営業一課の万年係長、八角民生は、いわゆる「ぐうたら社員」。課長の坂戸からはその怠惰ぶりを叱責されるが、ノルマも最大限しか果たさず、定例の営業会議では傍観しているのみ。
ある日突然、社内で起こった坂戸のパワハラ騒動。そして、下された移動処分。訴えた当事者は八角だった。
そんな中、万年二番手に甘んじてきた原島が新課長として着任する。誰しもが経験するサラリーマンとしての戦いと葛藤。だが、そこには想像を絶する秘密と闇が隠されていた。(映画「七つの会議」製作委員会より)
「七つの会議」も東山紀之主演のNHKドラマ版と、野村萬斎主演の映画版とがある。逆にこちらのおススメは映画版。
香川照之の相変わらずの顔芸もさすがだが、「陰陽師」のような時代劇のイメージが強い野村萬斎のぐうたら社員ぶりが意外にいい。
何よりも、及川光博、北大路欣也、片岡愛之助、木下ほうか、藤森慎吾、岡田浩暉などなどの芸達者な俳優陣が脇を豪華に固めている。
「空飛ぶタイヤ」のような大きなスケールではないが、日本の多くの会社で身近に潜んでいそうな会社組織の「闇」をテーマにしているところが面白い。欧米人にはまったく理解不能だろう。
映画を見る前、もしくは見た後には小説もぜひ。特に、老舗ねじ製造工場「ねじ六」を扱った章がとても興味深い。小さな小さなネジに詰まったロマンと悲哀を十二分に感じ取れる。
U-NEXTでも見られるよ!
3.「下町ロケット」-夢をあきらめない
下町ロケットシリーズの小説は以下のようにシリーズ化されている。
- 「下町ロケット」
- 「下町ロケット2ガウディ計画」
- 「下町ロケット ゴースト」
- 「下町ロケット ヤタガラス」
「その特許がなければロケットは飛ばない...」。町工場が取得した再先端特許をめぐる、中小企業と大企業の熱き戦いを描いた新時代の社会派ヒューマンドラマ。
かつて研究者としてロケット開発に携わりながら、今は実家の小さな町工場を経営する主人公に三上博史、ロケットエンジンの特許技術をめぐって主人公と相対する大企業の宇宙航空部長に渡部篤郎、特許裁判のスペシャリストとして佃を支える弁護士に寺島しのぶを迎え、夢と現実の間で戦い、葛藤する者たちを丹念に描き出す。
阿部寛が主演で佃社長を演じたTBSドラマ版がおなじみだけど、ただいまAmazonプライムで見られるのは、WOWOWの三上博史バージョンのみだ。
ただし、阿部寛がややコミカルな印象を与えるのに対して、三上博史の抑えた演技が光る。TBS版よりも全体的に地味な感じはするけれど、私は、じーんと心にしみるようなこちらのバージョンが結構好き。
わたし自身、特許の仕事に関わっているので、すごく興味深く楽しむことができた。
原作もぜひ一気読みを!
4.「花咲舞が黙ってない」-杏ちゃんの当たり役
Amazonプライムで有料レンタル中。
こちらを選んだのは、池井戸作品の中で珍しく、女性の主人公が活躍する作品だからだ。
主人公、花咲舞は、地位も権力もない、ただの一銀行員。
でも、上司に対しても間違っていることは「間違っている」と、はっきり言う性格。
事件や不祥事を起こした支店に行き、解決に導く臨店という仕事に就いた舞は、弱い立場の人たちのために、相手が誰であろうがお構いなしに立ち向かっていく。
上川隆也と杏の息の合った名コンビで、杏ちゃんの当たり役の1つにもなった作品だ。彼女の嫌みがなく飾らない性格がそのまま表れている。
原作は「不祥事」と続編の「花咲舞は黙ってない」。原作ではかなりのオヤジキャラだが、ドラマ版ではかわいらしさが勝っているかな。上川隆也演じる相馬との食べ歩きグルメと、舞の父親の居酒屋「花咲」での料理シーンもみどころ。
「女性版半沢直樹」と言われるように、見た後はスッキリ!
5.「民王」-
「民王」も残念ながらプライム会員特典ではなくレンタル。ただし、遠藤憲一と菅田正樹の絶妙な配役とキャラ設定がぴったりはまっていて、必見!
総理大臣の武藤泰山と、息子で大学生の翔の人格がある日突然入れ替わってしまう。
混乱を避けるため、周囲には秘密のまま互いの仕事や生活を入れ替わった状態で過ごすことになるが、翔は政治に全く興味がなく、ろくに漢字も読めないために国会答弁も苦労する状況。一方の泰山も、就職活動で面接官を偉そうに論破して不採用になる、といったドタバタコメディ。
原作からは少々設定が変更されており、ドラマならではのエピソードもちらほら。ただ単純に笑わせられるけど、意外に中身は現実を映し出している。
池井戸潤の引き出しが広いことがよく分かる作品だ。
まとめ
今回は、もっか大人気で、私も大好きな池井戸作品を紹介させていただいた。
他にもAmazonプライムでは「ルーズヴェルトゲーム」も「株価暴落」なども見られるのでチェックしてみてくださいね。