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オリジナルのリメイクは成功?それとも失敗?
過去のヒット作のリメイク物。ついつい気になって見てしまう。
でも、オリジナルを超える作品って結構少ないかも。
一方で、そもそもの着想が面白いから、そこに新鮮な魅力が加わって面白味が増すケースもあるよね。
昔の名作が、今の時代背景を考慮し、最新のデジタル技術も駆使してよみがえった--こういうパターンも面白いけれど、今回は比較的新しいリメイク物の中から特に、お国を超えてリメイクされたものをご紹介したい。現在Amazonプライムビデオで視聴可。
言語を除けば、ほとんど同じ脚本でも、お国柄が異なれば、なぜか大きく印象が変わって感じるのが不思議。
次の3作品はどれも私の好きな映画。「どっちも面白い!」、「こっちのほうが断然好み」と皆さまの意見が分かれるかもしれないが、その違いを楽しんでいただけると思う。
「怪しい彼女」(韓国/2014)VS「怪しい彼女」(日本/2016)
キュートなルックスと並外れた歌唱力を持つハタチの女の子、オ・ドゥリ(シム・ウンギョン)。
容姿とは裏腹に、彼女は歯に衣着せない毒舌で、わが道を猛烈に突き進む、最凶の20歳だったのだ。
しかし、誰も彼女の秘密を知らなかった。実は70歳のおばあちゃんだということを・・・。
可愛いルックスと天性の歌声を持つ20歳の女の子・大鳥節子(多部未華子)。
その容姿とは裏腹に、口を開けば超毒舌、相手かまわず罵声を浴びせ、時には熱く説教をする。
そんな“超絶あやしい20歳”の正体は、73歳のおばあちゃんだった!
シム・ウンギョン(韓国版)と多部未華子(日本版)が、中身が70歳のヒロインを演じ、両者とも体当たりの演技が光る。おばあちゃん役を演じたナ・ムニと倍賞美津子もさすがの貫禄だ。
何よりも、二人の歌唱シーンが見どころ。これまで多部未華子の歌唱力にはさほど注目が当たっていなかったように思うが、今回、その澄んだのびやかな歌声に驚かされた。彼女が劇中で歌う昭和の名曲「悲しくてやりきれない」は、これまでも多くの人がカバーしてきた。わたしはオダギリジョーバージョンが好きかな。
胸にしみる 空のかがやき 今日も遠くながめ 涙をながす
悲しくて 悲しくて とてもやりきれない
ヒロインは、わたしよりは一世代昔の戦中生まれで、早くに夫を亡くし、女手一つで子供を育ててきたという設定だ。青春時代の夢を手放し、キラキラとした若さからはもう遠くにいる多くの中高年世代だからこそ共感を覚えるシーンも。夢・恋・家族愛、そのすべてが濃縮されて詰まっている。
天才子役だったシム・ウンギョンの並外れた演技力のせいで、多部未華子のリメイク版はややインパクトに欠けるものの、キュートさでは負けていない。
笑えてホロっと泣ける、おススメの映画だ。
「最強の二人」(フランス/2012)VS「人生の動かし方」(アメリカ/2019)
パリの邸に住む大富豪フィリップ(フランソワ・クリュゼ)は、事故で首から下が麻痺状態に。他人の同情にウンザリしていた彼は、フザケた理由で介護者選びの面接に訪れた、スラム街出身の黒人青年ドリス(オマール・シー)を採用する。
その日から正反対のふたりの衝突が始まるが、偽善を憎み本音で生きる姿勢は同じだった。互いを受け入れ始めたふたりの毎日は、ワクワクする冒険に変わり、ユーモアに富んだ最強の友情が生まれていく。
スラム街出身で職もなく、妻子にも見放されたデル(ケヴィン・ハート)は、全身麻痺で車椅子生活を送る大富豪フィリップ(ブライアン・クランストン)の介護人として働くことになる。
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秘書のイヴォンヌ(ニコール・キッドマン)らのフィリップの周囲の人々は、キャリアも教養もないデルを雇うことに反対したが、否定的だったが、二人は次第に交流を深めていく。
住む世界が違うデルとフィリップだったが、この出会いが2人の人生を変えていく。
「最強の二人」は、フランスでは公開後、観客動員数で初登場から10週連続1位となり、2011年のフランスで公開された映画のうち、観客動員数で第1位となった。日本でも、2012年の興行収入は16億円を超えて、「アメリ」を抜き、仏映画で日本最大のヒットを収めた。
この映画は実話をもとにしている。その意外性がここまでヒットした理由の1つであることは間違いない。
主役の二人のコントラストが際立っている。フィリップは白人の大富豪で、ドリスはアフリカ移民系の黒人。教養にも大きな差がある。また、フィリップは半身まひの中年で、ドリスは肉体美にあふれた若い青年。フィリップは自分を特別扱いすることなく、新鮮な反応を見せるドリスの人間性に惹かれていく。そして、二人は、雇用関係を超えた心のつながりを深めていく。
しかしながら、この映画は単なる感動の人情物語では終わらない。この映画の画期的な点はフランスの人種問題に深く切り込んでいるところだ。スラム街で職にもつけず貧困にあえいでいるのはみな黒人、セレブな生活を手にしているのはみな白人。陽と陰、黒と白とが画面の中で次々に切り替わる。
わたしたち島国に住む日本人は日頃そこまで人種差別を実感することはないが、今後グローバル化が進んでいくうえで、国内外でともに差別に直面することが増えていくだろう。こうした現実をセキララに描いているところが、本国フランスで受けた理由かもしれない。
エンタメとしても面白さも言うまでもない。アース・ウィンド・アンド・ファイアーをはじめ、選曲がばっちりだ! スカイダイビング中に流れるニーナ・シモンの「Feeling Good」は、この映画のテーマそのものであるともいえる(アメリカ版では「誰も寝てはならぬ」)。
It’s a new dawn
It’s a new day
It’s a new life
For me
And I’m feeling good
さて、
「ロフト」(ベルギー/2008)対「パーフェクトルーム」(アメリカ/2014)
建築家のビンセントは、友人のクリス、ルーク、マーティ、フィリップの4人にある提案をする。
それは、彼が所有するマンションの部屋を5人で共有しようというもの。彼らだけの秘密として、それぞれが自由に情事を楽しむためだ。
ところがある朝ルークがその部屋に向うと、そこには女の死体と謎のメッセージが残されていた。慌てて集まる5人の男たち。
部屋の鍵を持っているのは5人だけ。彼らは互いのアリバイを探りながら誰が犯人か突き止めようとするが、事態は思いがけない展開に転がっていく……。
この「ロフト」。ベルギーで「10人に1人が観た」という大ヒットスリラーだ。その後すぐにオランダでもリメイクされ、ハリウッドでも映画化の運びとなった。
一言でいえば、実に「ゲスい」うえに「エロい」映画。不快感を覚える女性も多くいそうだが、わたしはそこがこの作品の最大の魅力で、ミステリーとしての設定の粗はあるものの、かなりの秀作だと思う。
ただし、それはオリジナルの「ロフト」の方。ハリウッドのリメイク版「パーフェクトルーム」では、「X-MEN」シリーズのジェームズ・マースデン 、「プリズン・ブレイク」のウェントワース・ミラー などの豪華キャスティングが、かえって本作を薄味にしてしまって魅力を半減させている(辛口)。
一方、ベルギー映画界を代表する俳優・キャストをそろえたという「ロフト」のキャスティングは秀逸だ。唯一、どちらの作品にも出演しているマティアス・スーナールツも、ベルギー版の方が狂犬のようなサディストぶりが光っている。ついでに言えば、5人の男たちの妻や愛人たちを演じる女優陣も、ロフトの方がリアルである。
これは演技力うんぬんというよりも、映画の退廃的なセンシュアルな雰囲気が、欧州映画にぴったり合っているせいかもしれない。
まとめ
今回のリメイク対決、タイプの違う3作品を選んでみたけど、興味を持っていただけたかな?
第2弾も近く書いてみるつもりなのでお楽しみに。